「ガリバー旅行記」スウィフト

taishiho2006-08-03

『原民喜のガリバー旅行記』

第一章 小人国(リリパット

第二章 大人国(ブロブディンナグ

第三章 飛島(ラピュタ

第四章 馬の国(フウイヌム)

ガリバー旅行記」は小人国と大人国は誰もが知っていると思います。
でもこの本の本当に面白いところは、第三章と第四章かもしれません。
最近では飛島(ラピュタ)も宮崎駿のアニメで有名になりました。
尤も、宮崎アニメの方はラピュタという設定を借りているだけですが。
第三章はラピュタ以外にも発明屋敷(バルニバービ)、幽霊の島(ラグナグ)
死なない人間(グラブダブドリブ)および日本旅行記と続きます。
とにかく複雑怪奇で風刺たっぷりなお話です。何故か最後に日本にも寄ります。
第四章馬の国では、フウイヌム(Houyhnhnm)と呼ばれる馬の姿をした生物が高い
知能を持っており、同じ国に、ヤフー(yahoo)という人間の姿をした野獣が出
てきます。ガリバーは馬の姿のフウイヌムたちに、知性を持ったひじょうに
珍しいヤフーとして迎えられます。


※映画「猿の惑星」はたぶん、この設定を拝借していると思われます。

沼正三の「家畜人ヤプー」はこの単語をベースに、動物を人間以
上に大事にしているどこかの人々を少し皮肉り、白人至上主義と強烈なSM
の世界、そして古代日本神話とをリンクさせて独特の世界を構築しました。



原民喜ガリバーを書き上げたあと、本になるのを待たずに亡くなりました。

 ガリヴァの歌  原民喜

必死で逃げてゆくガリヴァにとって
巨大な雲は真紅に灼けただれ
その雲の裂け目より
屍体はパラパラと転がり墜つ
轟然と憫然と宇宙は沈黙す
されど後より後より迫まくってくる
ヤーフどもの哄笑と脅迫の爪
いかなればかくも生の恥辱に耐えて
生きながらえん と叫ばんとすれど
その声は馬のいななきとなりて悶絶す

原 民喜 : はら たみき(1905〜1951)
被爆体験を作品に刻んだ、小説家、詩人。広島市生まれ。慶應義塾大学文学部英文科に進学し、1932(昭和7)年卒業。1944(昭和19)年3月9月、妻死去。翌年1月、千葉から広島市幟町の生家に疎開。8月6日、爆心地に近いこの家で、被爆する。広島の惨状を綴った「夏の花」をこの年のうちに書き上げる。同年4月、上京。被爆体験と妻との別れをテーマとした作品を、優れぬ体調と貧窮の中で書き続ける。1947(昭和22)年、「三田文学」6月号に「夏の花」掲載。1951(昭和26)年3月13日、中央線、吉祥寺・西荻窪間で鉄道自殺。

beatleさんのブログで「夏の花」を取り上げています。


ジョナサン・スウィフト(1667〜1745)英国の諷刺作家。アイルランドのダブリン生まれ、3歳まで孤児同然で親戚に養われ、学校では神学・哲学・数学などを嫌悪して、徹底的な劣等生・問題学生だった。トリニティ・カレッジ卒業後、政界の有力者の秘書、牧師などになったが、政治には終始、大きな関心をいだき続け、とくにアイルランド問題では活発な活動をおこなった。この間『桶物語』『書物戦争』などを著して風刺家として名をなした。1726年に『ガリバー旅行記』を出版。晩年は廃人同様の暮らしを送った。