「砂の器」

taishiho2006-07-30

■スタッフ
原作=松本清張         音楽監督芥川也寸志
監督=野村芳太郎        作  曲=菅野光亮
脚本=橋本 忍・山田洋次   演  奏=東京交響楽団
■キャスト
今西栄太郎・・・・丹波哲郎   本浦 秀夫・・・・春日和秀  田所佐知子・・・・山口果林
吉村  弘・・・・森田健作   本浦千代吉・・・・加藤 嘉  田所 重喜・・・・佐分利信
和賀 英良・・・・加藤 剛   高木理恵子・・・・島田陽子  三木 謙一・・・・緒方 拳
■かいせつ
撮影は厳冬の津軽海峡、信州路の春、深緑の北関東、山陰の盛夏、
そして北海道阿寒の高揚まで日本列島を縦断して、
追う者―追われる者のスピーディな推理とサスペンス、ダイナミックな音楽、
そして人間の宿命を浮き彫りする重厚な画調が象徴的なまでに哀しく美しい。
物語は、迷宮入りと思われた殺人事件を捜査する二人の刑事が、東奔西走
苦心さんたんの末その犯人に肉薄した時、いま正に栄光の階段をのぼりつめようとする
天才音楽家の数奇な生い立ち、暗い宿命を背負った秘密に突き当たる。

後半は、演奏会場、警視庁の捜査会議、回想シーンが同時進行する野心的な技法で
野村監督は「後半のすべてが長いワンカットと考えている」と語っている。


尚、被害者がお伊勢参りの途次二日間通った映画館の支配人を渥美清が演じている。


●なんと言っても、圧巻は後半の現実と同時進行する回想シーンでしょう。
警視庁の捜査会議では今西栄太郎が、この父と子の物語を語ろうとしています。
この悲惨な親子の旅は想像するしかありません。ここから、この映画は始まるのです。
セリフはありません。バックに流れている「宿命」という音楽だけなのです。
すべてがこのシーンの為にあるといっても過言ではありません。
男は、このコンサートの成功で自分の将来は約束される、と思い込んでいます。
男の作った曲は、正に父親と自分の背負ってきた「宿命」を描いているのです。
回想シーンは、その「宿命」という曲そのものと言えるかもしれません。
演奏が終わると同時に、この男の約束された将来も終わるのです。そしてこの映画も・・・。


※この映画は一方で、日本の差別の現実を描いていると言ってもいいかもしれません。
男は父親がハンセン病であることを認めたくなかったし、知られたくなかったのでしょう。

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