●「まっぷたつの子爵」 イタノ・カルヴィーノ 著 河島英昭 訳  昌文社         
これはなんと奇妙で、なんと戦慄的なおかしな物語だろう。ぼくの叔父メダルド子爵はトルコ戦争で敵の砲弾をあび、まっぷたつに吹っ飛んだ。戦いのあと彼の半身は左右別々に故郷の村に帰ってくる。うつろな半身をまっ黒なマントの下に隠して、片目、片耳、片腕、片足の子爵が平穏なぼくの村にもたらす恐ろしい災いと珍奇な出来事。戦後イタリア文学が生んだ最も面白い物語として世界の青年を魅了しつづけているカルヴィーノの傑作!

 面白い本を見つけると誰かに教えたくなる。よせばいいのに友達に面白いから読めと、つい貸してしまいかえって来ない本もある。幸いにして、この本は家出もせずにおとなしく本棚に収まっている。すごく面白かったという印象が残っているが、もうかれこれ時が30年も経っているのでまた読み返してみようかと思う。