マゼラン

 

本棚の片隅に眠って、もう日の目を見ることはないだろうと思っていた本。
それは僕以外の人にとってはただの古本、または重くて邪魔なゴミでしかない。

そんな僕だけの宝物をここで取り上げられることが出来て幸福に思う。


○大探検家シリーズ「マゼラン」 イアン・カメロン 著 鈴木主税 訳

この書は十六世紀初期にはじめて世界周航に成功したマゼランの伝記である。
豊富な図版と周到な地図が当時のマゼランが生きた世界を生き生きと創造させる。

修行時代から始まり、大西洋横断、マゼラン海峡の発見、太平洋横断、
そしてフィリピンであっけなく殺されてしまう。とにかく面白い本だ。

だが、これはあくまで西洋の人たちから見た「マゼラン」である。


●「マゼランが来た」 本多勝一 著

この本もカラー写真豊富で大変読みやすいので読まれた方も多いのと思う。
この本の特徴はマゼランが寄航したすべての現地を調査したところと
なんといっても西洋の視点からではなく、先住民の視点から描いているところである。


[悪魔の使者]
 チリにあるサレシア教会博物館には「先住民狩り」の写真が飾られている。
西洋人が銃をかまえた足元に、射殺された先住民が弓を片手に裸でころがる写真。
日本人観光客が多い、海が美しい島グァムだが、ここも悲惨な歴史があった。
「マゼラン隊がここを焼き払ってチャモロを虐殺した。」
「いろんな血がまじっている。マゼラン隊に強姦されたところから始まった。」
 「新大陸」の全土に生きついで来た何千万ともしれぬ先住民や、マリアナ諸島
何万もの先住民の目で見るとき、ヨーロッパ人は「悪魔」以外の何者でもなかった。
虐殺された何千万ともしれぬ魂にとって白人たちの芸術も科学も宗教も無意味だった。
それはコロンブス以来500年間途切れることなく続き、今なお進行中なのだから。


これは人類の歴史として教科書にも書いて、全ての人達が知っておくべきではないか。
僕は、この本を読んだ当時、興奮して会う人会う人にこの話をした記憶がある。
自分の子供にも「読んだほうがいいぞ。」と言って渡したが、読んでもらえなかった。