『コウノトリがよみがえる里』

taishiho2006-08-28

田んぼの中に千人もの人が集まっている。
一体、何を待っているのだろう。
それは、絶滅してしまった鳥を人工繁殖させ
人里に放そうとしているところだった。
なにげなく見ていたその番組は興味深く
途中で観ることを止められなくなった。

NHKスペシャル 「コウノトリがよみがえる里」
 1971年に野生では絶滅した日本のコウノトリが、昨年秋、最後の生息地・兵庫県豊岡市で放たれた。人工繁殖で増やした絶滅種を、人里に放して共存を目指す世界初の試みだ。最大の課題は環境作り。中でも農家が農業のやり方を変え、川や水田に生きものを増やすことができるかが成功のカギを握る。番組では、人にもやさしい豊かな里山再生に挑戦する人々との姿と、冬を越し、繁殖の春、そして夏までのコウノトリの行動を追う。

 1971年に日本から姿を消したコウノトリが、昨年秋、最後の生息地だった兵庫県豊岡市で放された。人工繁殖で育てた5羽だ。絶滅した鳥を人里に放し、共存を目指すのは世界初の試みだ。コウノトリは湿地や水辺に棲む大型の鳥。里山の大木に巣を作り、魚や水生生物を食べる。この地方では、「ツル」と親しまれ守られてきたが、戦後、農地整備や農薬の影響で食べるものが消え、大木の伐採や、農薬の影響と思われる繁殖力の低下などで絶滅した。しかし、40年に渡って人工繁殖が行われ、それが軌道に乗り始めた15年ほど前から野生復帰の準備が進められてきた。
 その最大の課題は環境作りだ。昔の環境に戻すことはできない。そこで、水田を湿地に見立て、そこに生きものを呼び戻す活動が進められた。農家が農薬使用をやめ、魚が増えるよう、長期間、田んぼに水を張るなどの新しい農法に取り組み、水路と水田を結ぶ魚道の整備なども行われている。一方、放鳥された5羽のコウノトリは、初めは人の与える餌に頼り繁殖施設に戻ってしまったり、木にとまることができずに電柱に巣作りして撤去されたりするなど、野生化は人間の思惑通りには進まなかった。が、やがて、大飛行して戻ってくるものも現れ、農家が整備した田んぼなどで獲物をとる様になって、1組のペアが誕生し産卵にもこぎ着けた。
 番組では、人にもやさしい豊かな里山再生に挑戦する人々との姿と、放鳥後、初めての野生化で冬を越し、繁殖の春から夏まで懸命に生きるコウノトリの行動を追いながら、山間の町が取り組む自然共存の壮大な実験を見つめる。

カメラは農薬をやめた水田の中に入ってゆく。
すると、そこには無数の糸ミミズがゆらめいていた。
そして、それを餌にする鮒が近付いてくる。
水田の中は生き物たちが戻ってきて、まるで楽園のようだ。
それはかつて、日本の水田や小川で目にするごく普通の風景だった。
これが当たり前の姿なのに、日本には当たり前がなくなってしまった。
私たちは毎日毎日、農薬にまみれた米を胃の中に入れていて大丈夫なのだろうか?
そんな不安な気持ちになりながら、この番組をおしまいまで見た。