『馬頭琴』

taishiho2012-07-10

銀座の選抜展の時に一緒に展示していたKさんがお嬢さんを連れて来た。
なんとお嬢さんはモンゴルに留学していて、そこで馬頭琴を覚えたという。
二胡の演奏は聴いたことがあるが、馬頭琴の音色を聴くのは初めてだ。
チェロのような低音が、思ったより大きな音量で会場いっぱいに響いた。
なるほど、モンゴルの大平原に鳴り響いている様子が目に浮かんでくる。
先端が馬の形、その直ぐ下には龍が口を開けそこから2本の弦が出ている。
なんとも魅力的な楽器である。お嬢さんが魅了されたのも判る気がする。

日本では、物語「スーホの白い馬」の中に出てくる楽器として有名である。

馬頭琴はヴァイオリンや二胡等と同じ擦弦楽器で、モンゴルを代表する弦楽器である。特徴として先端が馬の形を模した棹、四角い共鳴箱に2本の弦から構成される。弦を支える駒が上下にあり、音程の微調整にも利用される。本体は木材を用いる。旧来は共鳴箱の表にヤギや子ラクダ、子馬などの皮革を張っていたが、モンゴル国では1960年代にソ連の楽器職人D.ヤローヴォイの指導により、内モンゴルでは1980年代になってB.ダルマーやチ・ボラグらが中心になって、木製の表板を用いるように改良が加えられ、さらにf字孔や魂柱などの要素も加わった。弦と弓はウマの尾毛またはナイロンを束ねて作る。ウマの尾毛の場合、低音弦は100-130本、高音弦は80-100本、弓は150本-180本程になる。

モリンホールは内モンゴルモンゴル国で、音程や材質に違いが見られる。2本の弦の音程は、内モンゴルでは高音弦でド(C)、低音弦でソ(G)なのに対し、モンゴル国では高音弦でシ♭(B♭)、低音弦でファ(F)となる。本体の共鳴箱や棹の材質は製作者によって異なるが、内モンゴルではエゾマツやシロマツなどの松材を用い、モンゴル国ではシラカバを用いる場合が多い。その他、装飾や構造などにも幾つかの差異が認められる。

音質は柔らかで奥行きのある響きで、チェロやヴァイオリンのような澄んだ音にはないノイズの含有が、モリンホールの特徴的な音質を形作っている。そのため、「草原のチェロ」とも呼ばれている。また、三味線のように数種類の調弦があり、演奏者や曲目、地方などにより変更される。ギターのようなハーモニクス奏法も可能である。

馬頭琴の伝統音楽は2003年、ユネスコの「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」において傑作の宣言を受けており、世界無形遺産に登録されることが事実上確定していたが、2009年9月の第1回登録で正式に登録された。