『バレン』

taishiho2007-08-24


バレンの優れているところは持ち運びに便利なこことと
プレス機と違って、どんな大きなものでも摺れることです。
バレンは長く使っていると包んでいる竹の皮が痛んできます。
木版画を摺る人は、それを自分で張り替えなければなりません。
バレンを竹の皮で包むだけのことなのですが、全神経を傾けます。
張り替えた後、「今度こそ絶対完璧に張ってみせる」と思うのですが
なかなか思うように張れるものではありません。
摺り師は、そうやって一生その思いを繰り返すのでしょう。

『本ばれん』は「当て皮」、「バレンツナ(芯)」、「包み皮」の3つから成り立っている。


「当て皮」
和紙を皿型に糊で貼り合わせて、布を被せて漆で仕上げます。和紙は、楮紙の薄く丈夫なものに、弱いドーサを引き、柿渋を塗ったものを用います。糊は、蕨‐ワラビ‐の根から採取した蕨粉(ワラビデンプン)を煮て、それに柿渋を加えて、よく練り合わせたものを用います。蕨糊は、最強の糊と称され接着力は強く、また、乾くと、小麦の糊のように、再び周囲の湿気を帯びることもありません。布は、本絹の絽を使い、漆を5回ほど塗って仕上げます。和紙を貼り重ねるには、木型を用いるので、まさに張子の要領です。


「バレンツナ(芯)」
 中央にあるバレンツナが最も重要な働きを担っている。これはシラタケを細かく裂いたものでコヨリを作り、これを撚り合わせ、最後に渦巻状に巻いたもの。撚り合わせるときにできるコブを金平糖といい、それが摺りの際に適度な加圧をもたらす仕組みになっている。

 縒ったバレンツナの数でバレンの種類が区別され、それぞれバレンの強さをも表す。  四コ、八コ、十二コ、十六コ、二十四コなどがあり、数字が大きくなるにしたがって強くなる。これらを版画の表現に応じて使い分けるのだ。


「包み皮」
芯を当皮の内に納め、之を包み結ぶ竹の皮を包み皮という。水に漬けて柔軟にした竹の皮を、堅木の板の上に載せて伸ばし、その筋立つているのを、剪刀の尻か猪の牙などで、横にこすつて潰し、皮を平らにする。竹の皮で包み結ぶのは稍熟練を要し、摺り師の巧者不巧者は、大抵馬連の包み結び方を見て判断がつく、と言い伝へる程で、これが満足に出来れば、一人前の摺り師といふて差支えないとしてある。